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みんなの本の感想など

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■2023年1月からの投稿

  
タイトル 著者 登録者 内容(感想) ジャンル 登録日
恋ふらむ鳥は 澤田瞳子 rieko 7世紀後半の大和朝廷の外交と国内の政争を描いた政治小説であると思う。主人公は当時の著名な歌詠みである額田王。私が学生時代に習った歴史では、彼女をめぐって葛城王子(中大兄皇子)と大海人(王子)皇子が恋のさや当てをしたとされる。しかし、当時40歳代であった額田を中大兄は彼女をあくまでも有能な宮人(いわば公務員)として扱い、恋の対象とは見ていないのではと考えている。当時歌は政治的に大変重要な役目を持っていた。例えば、朝鮮半島に出陣する人々の士気を高めたり、近江の大津宮で百済と新羅の臣下の歌争いをなだめて大和朝廷の面目を保ったりと、額田は政治的に重要な局面で歌を詠んでいる、と作者は指摘する。冒頭で、額田には色の識別が難しいという肉体的ハンデがあったと仮定して物語は進むのも、大胆な設定だ。新たな古代史の絵巻物を眼前に広げられたような気がする。 2023年2月27日
Beyond a Reasonable Stout Ellie Alexander rieko アメリカ、シアトル近郊の小さな町Leavenworthでビールの職人をするSloanという女性が主人公のミステリー小説第3作目。町は古くからドイツビールで有名で、毎年ビール祭りが開催され、近隣の大都市からも観光客が多数訪れる。このビール祭りに賛成か反対かをめぐって殺人事件が起こり、彼女が活躍する。随所にビール発酵工程やその風味の違い、おいしいドイツ料理やお菓子の記述があり、思わずページをめくる指に力がこもる。翻訳本は東京創元社から「ビール職人の秘密と推理」という題で出版されている。 2023年2月27日
丘の上の本屋さん _ rieko イタリアの小さな町の丘の上にある古本屋さんが舞台。リベロ(”自由”という意味)という変わった名を持ち、ユーモアのセンス抜群の老人が経営している。健康診断の結果はあまりよくないらしく、食べ物の節制をしている様子だが、読書に関しては非常に貪欲である。ある日アフリカ移民の子供、エシエンが店の前の漫画本を興味深そうに眺めているのを見て、無料で貸し出すことにした。以降児童書から、童話、一般書へと貸し出す本の範囲は広がり、二人は読後の感想を話し合いながら友情を深めていく。店を訪れる客はそれぞれ個性的で、本に対する真摯な思いが映画の画面からあふれてくる。丘の上から見える森の景色や農家の営み、エシエンが座って読書するベンチのある公園での人々の何でもない日常風景などが、平和で穏やかな暮らしの素晴らしさをを伝えてくれる。読書に関するリベロの数々の言葉の中で、「本は二度読むものだ。最初は筋を追うため。二度目は考えるため。」というのが特に印象深かった。再度見たい映画だ。 映画 2023年3月13日
墨のゆらめき 三浦しをん rieko 30代後半の若い書道家と同世代のホテルマンとの友情物語といえよう。今風に言えば”聞く力”を持ったホテルマンが、ホテルのパーティー業務で必要な新たな筆耕者の自宅を尋ねることから話は始まる。彼の訪問が重なるにつれて、書道家の特異な過去と彼自身の上京の理由が少しづつ明らかになるのであるが、その過程がまるでミステリー小説を読んでいるかのようにゾクゾクとした興味を誘う。ページをめくる 指が加速されてくるのを感じながら読み終えた。ネタバレになるので、書道家の過去をここで示すことはできないが、現代社会の裏面を浮かび上がらせる時事小説ともとらえることもできると思う。 2023年7月3日
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