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みんなの本の感想など(2021年1月~12月)

各年の目次(リンク)


■2021年1月からの投稿

  
タイトル 著者 登録者 内容 ジャンル 登録日
一日10分のぜいたく(NHK国際放送が選んだ日本の名作) 現代の8人の作家 rieko 現代の8人の作家(あさのあつこ、いしいしんじ、小川糸、小池真理子、沢木耕太郎、重松清、高田郁、山内マリコ)による短編集です。子育て、介護、父親の離職、熟年離婚、孫との交流、団地の歴史、1964年東京オリンピック時の世田谷等テーマは多岐にわたります。しかし、どの作品も読後はジーンと心が温かくなります。ラジオ放送されたということなので、音読で聞いてみたい本です。 2021年1月15日
坂の上の雲 一 司馬遼太郎 らっきー 恐らく高校生の頃「竜馬がゆく」を読んで以来の司馬遼太郎さん。読まなかった理由は、夢中になって家事をしなくなること間違いない上に話が長いから。禁断の書でした。最後の子どもの大学受験が始まり、もう私も子育て卒業、読む許可を自分に出したのです。案の定、食事は手抜きになりました。図書館本で、コロナ休館により続きが読めない状態です。素晴らしい描写に引き込まれ、日露戦争に進んでいく日本をその場にいて見ているかのようで、こちらも血が逸ってしかたないのに続きが読めません。残念っ! 2021年1月16日
遠い山なみの光 カズオ イシグロ tami カズオイシグロの作品は、読んでいて不思議な感覚になる事があるが、今まで読んだ中で、この作品が一番そんな感覚になる。私自身もそうだが、人は人生を色々迷いながら、自問自答しながら手探りで生きていくのかも知れない。心許なさや不安感を感じてしまうような感覚になり、なんだか自分が理解できていない所が色々あったような気持ちになり、もう一度いつか読みなおしてみようと思う作品でした。この本を読んだ事がある人と話ができたら良かった・・・。 2021年2月6日
「歴史人口学事始め~記録と記憶の90年」速水融 rieko ”人口”をキーワードに歴史の出来事を解明しようとしている大変面白い本。前半は作者の半生が綴られ、さして興味はわかなかったが、後半の”歴史人口学”を学問として確立したあたりから俄然面白くなった。現在の日本の人口減少を著者は”女性達の静かなる革命”と言う。つまり、男性優位の社会で我慢を強いられた女性の反逆だと。もう子供を産むだけの人生ではないという意思表示ととらえる。先週の森さんの女性蔑視発言からもこの国の暗部が見えますね。 2021年2月8日
変身 カフカ tami ”変身”は不条理の文学と言われている事もあり、あらすじは知ってはいたが読むのを避けていた所があった。今回あらためて読んでみると、とても優れた作品だと思った。(と同時にやはり心が痛むものであった。)ある日突然異質なものとして扱われるようになり、家族ですら理解しようとしてくれない悲しさや絶望。 そんな「ある日突然に、それまでの生活やその人らしさ、或いは意思疎通までも出来なくなり、周りがその人を理解しようとしない」といった事は病気や障がいにしても、時としては誤った政策や差別といった事で、小説だけの話ではない・ありえない事ではないと、色々思いあたる(そういったものを象徴している)と思われただけに、とても考えさせられた。 2021年3月3日
自分の頭で考える日本の論点 出口 治明 rieko 物事を考える時に必要なキーワードはタテ・ヨコ・算数の3つ。つまり、歴史・世界的な視野・数学的な思考であると著者は言います。これを駆使して、日本の新型コロナ対策、少子化、気候変動等22点についての論点を展開しています。読みごたえのある時事問題研究です。 2021年4月4日
押し、燃ゆ 宇佐見 りん rieko 第164回芥川賞受賞作。主人公は女子高校生。メンズ地下アイドルを応援することが彼女の”背骨”である。つまりは生きる意味付けと考えられる。読み始めてもなかなか前に進めなかったが、それはアイドル応援に生活すべてを捧げることへのばかばかしさが私のこれまでの人生とは相いれなかったからと思う。しかし何とか読み進むうちに、この”背骨”は形こそ違え、誰でも持ちうるものではないかと思いいたった。著者の力強い筆致がぐいぐいと迫ってくる感じがし、読後感は救われた気がした。 2021年4月6日
クララとお日様 カズオ・イシグロ rieko 2017年ノーベル文学賞を受賞した作者の6年ぶりの新作長編。主人公のクララは子供の相手をするための人工知能を搭載したロボットで、太陽光からエネルギーをもらっていた。彼女が病弱なジェシーの家に買われ、ずば抜けた観察力を駆使して子供の成長に協力していく物語。未来社会の厳然たる格差、コミュニティーの複雑さ、科学に対する相反する考え方等、現代社会にも通ずる葛藤を語っている。文中で”多くを観察するほど感情も多くなる”や”人間はさびしさや孤独を嫌い、それを逃れるためなら思いもよらない複雑な行動をとる”といったクララの言葉は重みがあると思う。 2021年4月19日
あきない世伝 金と銀 9巻 高田郁 rieko 大阪の呉服商五十鈴屋の女主人・幸が江戸の浅草田原町に出店し、商売を軌道に乗せようと奮闘する第9巻目。実の妹が、できの良い姉・幸への反発のためにライバルの大店の呉服商に秘密裏に嫁ぐ話は、肉親ゆえに憎悪がより深まると納得できた。成功してきらびやかな衣装に身を包んだ妹が、歌舞伎の芝居小屋の階段で木綿の着物の姉を見て、にやりとあざ笑う描写は恐ろしいほど美しい。 2021年5月10日
陰謀の日本近現代史~戦争と大事件の「闇」を照らす 保阪正康 rieko 第二次世界大戦の日米開戦の舞台裏を、アメリカの外交文書及び多数の日本人当事者や関係者からの聞き取り調査等をもとに考察した本。著者は昭和の戦争を以下のようにとらえている。つまり、戦争を好んだ軍人たちが、日本の国力の貧弱さを度外視して戦争をはじめ、戦中は戦地での水増しされた自己に都合の良い情報だけを取り上げ、無謀な作戦を次々に展開し、ついには国民に精神論で戦え、最後は玉砕をと強いた。読後は本書を手にして、しばし呆然としてしまった。現在のコロナ禍の政治家たちとも共通するような点が多々あるなと思った。 2021年5月31日
あきない世伝 金と銀 10巻 高田郁 rieko 江戸の呉服商五鈴屋は呉服仲間を追われ絹物を商うことができなくなり、木綿を扱わざるを得なくなった。逆境にもめげず、主従はこれまでにない浴衣地の開発に臨む。職人たちや商人の仕事に対する誇りやお互いに切磋琢磨、協力する様子に頭が下がる。読後感は爽快で、コロナ禍で沈みがちになる気持ちが軽くなった。次巻の発売が楽しみ。 2021年5月31日
Les Miserables/A Little Princess (Oxford Bookworms Library) tami 2021年の春からOxford Bookworms Libraryというシリーズを使って、英語の本をなるべくたくさん読むという「多読」の勉強法を始めました。(英語の苦手感克服のため勉強法を探していてみつけたもの。)せっかくなので、記録しようと、今更ですが3月始めに最初に読んだ2冊を紹介します。まず、このシリーズは難易度毎にレベルがありレベル1は(単語が400語)というだけあってよみやすく、興味のある本から選んだので楽しめました。1冊は原作がヴィクトル・ユゴーの「レ・ミゼラブル」で、もう一冊の原作はフランシス・ホジソン・バーネットの「小公女」です。この2冊はどちらも有名なので概要は省略しますが、「多読」という勉強法のコツを書いておきます。コツはわからない単語を調べず読み進める事と、つまらないと思った本は途中でやめて別の話を読む。というものです。何冊か読んでみて、私は児童文学が全般的に好きだったので、児童文学は相性が良いです。この「小公女」は子どもの頃に好きだったものなので、懐かしくて一気に読めました。つまり、知っている話の方が読みやすい(知らない単語があっても読み飛ばしても意味が推測できる)。また、知らない話でも好きなジャンルだと読みやすいと実感しています。ちなみに、ストーリーはレベルにあわせて調整されているので、割愛されている部分も結構あり、あらすじを読んでいるようなイメージです。 2021年5月31日
エレジーは流れない 三浦しをん rieko 昭和時代に栄えた地方の温泉町(餅湯)に住む男子高校生が主人公。出生の秘密を抱えながら育ったが、小さな町の共同体(餅湯商店街)の中で人と人とのかかわりに助けられ、青春を謳歌しているようである。勉強、進学、恋愛、地方での生活、将来への思い、ジェンダーギャップ、会社経営等面白い話題は広範囲に及ぶ。手に汗握るミステリアスな予兆が、抱腹絶倒の展開に変わり、最後は餅湯温泉の明るいテーマ曲で閉められている。気分が沈みがちなコロナ禍に読むと、一杯のレモンスカッシュを飲んだ後のように爽やかな気持ちになった。 2021年6月3日
美しき愚かものたちのタブロー 原田マハ rieko 上野国立西洋美術館の松方コレクションの歴史に基づいたフィクション。旧川崎造船所初代社長の松方幸次郎が、大正5年ごろから昭和3年にかけてロンドンやパリで集めた美術品(現地で保管されていた)が、第二次世界大戦後にフランスからやっと寄贈返還された数奇な運命が綴られている。グローバルに活躍するビジネスマン松方氏が、日本の若者たちの勉学のために美術館を作ろうとした経緯が丁寧に書かれており、日本の将来を見据えた彼の壮大な構想に圧倒される。彼の周囲で美術品収集のアドバイスをした日本人西洋美術史学者の卵やパリの画商たちとのやり取り、そしてモネ、藤田嗣治などの著名な画家たちとのエピソードも多数盛り込まれている。著名な美術作品の魅力がさりげなく展開されており、著者が学芸員出身であったことに納得する。読後、西洋美術館を巡り本書に取り上げられた作品を実際に再度鑑賞したいと思ったが、館は2022年まで休館である。残念! 2021年6月15日
「風神雷神」上巻 原田マハ rieko 安土桃山から江戸時代初期にかけて活躍した絵師”俵屋宗達”の物語。この絵師の代表作”風神雷神”(国宝)はあまりにも有名だが、その生涯は謎に包まれている。著者は、稀有な天才絵師宗達と天下人織田信長との鮮烈な出会いが、数々の傑作を生む引き金になったという筋書きを付けた。自由闊達な宗達は新しい技法や題材に挑戦しようとし、野心家の信長は当時の世界の中心と考えられたローマを見据えて行動しようとしていた。天正遣欧使節の史実をはじめ、当時のグローバルな時代の雰囲気をかなり丁寧に描いている。さらに、狩野永徳の「洛中洛外図」や宗達の数々の作品の制作過程を細やかに描写している部分は圧巻である。図書館で予約している下巻到着の連絡が待ち遠しい。 2021年6月30日
朝井まかて rieko 明治の文豪森鴎外の次男、「類」の半生記。父や母、兄、二人の姉(茉莉、杏奴)と類との関係を中心に話は進む。偉大な父親を持った子供がその有形無形の財産を受け継いで生きて行かねばならない厳しい現実を丁寧に表現している。しかし、父の遺産のおかげで働かずとも食べていける”高等遊民”の類にはあまり好感を持てなかった。最終章で、花を愛で庭園づくりに余念のなかった鴎外が唯一好まなかった薔薇を、晩年の類が庭に植えた条は、世間の風聞や亡き父の名声の呪縛から逃れ、自分の人生を肯定したことを象徴していると思った。また、明治から大正、昭和に至る政治的大事件を、類の家族や近隣の人々との会話にさらりと挿入し、当時の社会情勢の断片を浮かび上がらせている著者の手法はさすがである。 2021年7月2日
ことり 小川洋子 rieko 小鳥の小父さんはボランティアで幼稚園の鳥小屋を掃除することからあだ名されたシニア男性。両親、兄はすでになくなり、天涯孤独の身。図書館で小鳥に関する本を読むことが幸せで、鳥の鳴き声を上手にまねることができる。行動範囲は非常に狭く、人とのコミュニケーションが苦手である。子供のころから毎週ほぼ規則正しく同じ行動をとることにさして疑問も不満も感じなかった。縁側で鳥かごを抱いた状態で亡くなっており、死後数日たって新聞配達人に発見された。もしコロナ禍でなければ、彼の起伏の少ない毎日を”ちょっと変人の生活”ととらえて一笑に付し、この本を最後まで読み終えていなかったかもしれない。しかし、現在のパンデミックの最中に自由な行動を自粛せざるを得ない私は、小鳥の小父さんが日々繰り返しているささやかで実直な生活を非常に尊いものに感じる。”小さな心温まる喜びで微かに日々を送る”小父さんに感情移入してしまった。 2021年7月26日
尼僧看護師が見つけた~心の痛みがきえる28の言葉~ 玉置妙憂 rieko 表題にある通り、看護師であった著者が夫の死後に出家し、たくさんの人々の臨終に立ち会った経験から、パンデミック最中の昨年7月に出版した本。28個の言葉はどれも心に深くしみわたり、読後は静謐なひと時を味わえます。 2021年7月26日
記憶をつなぐラブレター~母と私の介護絵日記~ 城戸真亜子 tami 認知症になった義母と同居しはじめた著者が、忘れてしまい「はじめて聞いた」と寂しそうに言う姿をみて、日記を書き始めた。そこには、かわいらしいイラストと、義母をほめたり感謝の言葉もちりばめられていた。それはお義母さんに読んでもらうための日記。日記を見つけて手にし、読んでにっこりするお義母さん。そんな姿をみていたかった気持ちがなんだか良くわかる。
私はこの日記のエピソードをあるTVで知り、この本を手にした。本のプロローグ「認知症にはじめに気づくのはたぶん本人。覚えていられないことや、できないことが少しずつ増えていくいることにおびえ、それを周囲に気づかれないよう、絶えず取り繕う日々はどんなにつらく悲しいものだろう」という言葉がチクリと刺さる。私の母も亡くなる少し前に認知症になった。本を読みながら私も当時の事を思い出していた。なぜ、ちょっとおかしいな?という”予兆”から早期発見できなかったんだろう。私も同じ。さまざまなエピソードのほんの少し含まれる後悔は、だいたい私も同じだった。この事を知っていれば、こう出来たのにという想い。やさしい絵とほっこりするようなエピソードからも、老いる事や見守る事について考えさせられた。
2021年7月27日
落花 澤田瞳子 rieko 平安時代の平将門の乱(935年~940年)を仁和寺の僧・寛朝が坂東の地で体験したことを物語っている。京の雅な文化や組織的な官僚制とは対照的な坂東のいわゆる野蛮な風土や生活に戸惑う寛朝だが、次第に将門の”義”やしぶとく生きる傀儡や群盗などの逞しさに惹かれていく。寛朝は将門の死を”落花”にたとえ、戦いに散った人々に空海のもたらした”理趣経”を唱える。この経は”この世のありとあらゆるもので本性が清らかでないものは皆無。それゆえ悟りの真実の知恵もまた清浄”という言葉に集約されるそうである。また、もう一人の重要人物は寛朝の従者・千歳である。卑賎の出身でありながら音楽の才能に秀でているがゆえに、名器”有明”という琵琶を手に入れ楽人として京に戻るという下心がある。その野望実現のために手段を選ばない彼の策略は、物語に深い業の暗闇を与えている。著者は史料を駆使して、坂東の地で繰り広げられる戦の描写や地方の政治の実態の説明、各地の寺院の様子等、細やかに描いている。読み進むうちに、私自身が10世紀の関東で生きているような錯覚に陥った。 2021年8月2日
How Contagion Work Paolo Giordano rieko イタリアの物理学者でベストセラー作家である著者が、昨春のコロナ禍で書いたエッセイ。イタリアのコロナ感染者が急増し、町がロックダウンされ、医療崩壊が起こった生生しい様子が読み取れる。感染については”広く明確な数字”を示せという著者の主張には共感する。「安心安全な東京五輪」とはいうが、数字を見れば日本の感染者の激増は明白である。専門家は早くからグラフや数字を使って感染爆発を警告してきたが、政治家が見ている数字はワクチン接種した高齢者の感染者数と重症者数に限定されるようだ。 2021年8月2日
こころの深呼吸~気持ちがすっと軽くなる 海原純子 rieko 雑誌「婦人の友」に連載されたエッセーをまとめたもの。著者は精神科医&ジャズ歌手。コロナ禍で外出や他人との自由なおしゃべりを自粛している我が身にとっては、ストレスがたまる。それを軽減してくれるような文章が並ぶ。一番心に響いたのは”体調をくずすこと”について、必ずしも否定的にとらえていないことである。”体の不調は自分の生き方を見直す最大のチャンス。その時立ち止まり、体がゴーサインを出す方向に進めばよい。”という言葉に、2か月以上体調不良だった私は救われた。 2021年11月8日
星落ちて、なお 澤田瞳子 rieko 今年度直木賞受賞作。幕末から明治前期の日本画家、河鍋暁斎を父にもつ女性画家暁翠が主人公。父から伝統的な狩野派の手法を習い、一時期女子美大の教壇にも立った。結婚しても絵を描き続け、やがて離婚し、一人娘を育てるシングルマザーとなる。生活のために当時流行の広告なども手掛け、人気を博す。しかし、父には到底及ばない自分の日本画に自信を持てず、悶々とした日々を送る。最終的には父暁斎の業績を次世代に伝えるのが自分の使命と考え、父の呪縛から解放される。表題の”星”とは父暁斎をさすのかと思う。著者の作品は本書も含めて時代考証がしっかりしており、当時の史料が随所に取り入れられ、臨場感がある。今回は、関東大震災に遭う主人公が出先から命からがら自宅に帰る件が秀逸。また、彼女を支援していた豪商の鹿島清兵衛や実兄についても史実に基づいた展開に加え、作中人物の心理をわずかな挙動や表情描写で表現している点に驚嘆する。 2021年11月8日
失われた岬 篠田節子 rieko 2000年代始めのいわゆる優等生風の主婦の日常を活写した冒頭から彼女の失踪へと話は進む。北海道道北の日本海に面した秘境にちかい岬へと姿を消した彼女を追って、転勤族仲間の普通の主婦が夫や失踪者の娘とともにその秘密に迫る。すべてが明らかになるのは2030年代で、ミステリアスな近未来小説と思う。最初の1ページから最後のページまで一気に読んだ。近隣諸国からの軍事的な威嚇、SNS全盛時代の情報戦、長寿のための最新の薬を巡る各国の争奪戦など広い視野に立って人はどう生きるのか、自分はどう生きたいのかを考えさせる小説だった。また、岬が、アイヌの定着をさらに超える古い歴史を持っていることを示している記述も印象に残った。 2021年12月4日
鎌倉燃ゆ 編者・細谷正充(谷津矢車、秋山香乃、滝口康彦、古川永青、高橋直樹、矢野隆、安倍龍太郎、著) rieko 平安時代末の源頼朝挙兵から鎌倉幕府3代目将軍実朝に至る鎌倉初期を舞台にした時代短編小説集。源義経、静御前、北条政子、北条義時など著名な人物の側面を描いているものは、違った視点で歴史を見ることの面白さを教えてくれる。頼朝の参謀であり絶大な権力を誇った北条時政の政治的な手腕の衰退を描いた一篇には、人の老いを直視させてくれる。日本3大仇討ちの一つ「曽我兄弟の仇討ち」は関係人物が多く、しかもその名前が複雑な読み方で、人物関係図を書きながら読み進めることになった。本書を手に取ったきっかけは、新聞の書評で取り上げられていたからである。来年度のNHK大河ドラマの「鎌倉殿の13人」を楽しむためには適した本という推薦文であった。名前は良く知っている、或いは名も知らぬ人物たちの活躍がどう描かれるのか、ドラマ放映が待ち遠しい。 2021年12月4日
インド夜想曲 アントニオ・タブツキ著・須賀敦子訳 rieko 早稲田大学内の村上春樹ミュージアムの書棚で見つけた本。失踪した友人を訪ねてインド各地を旅行したミステリー仕立ての旅の本である。実は主人公が自分の分身を探してインドの夜を彷徨う話であった。読後は、生命力の強いインドの深い闇の中に私自身が主人公に同化してしまったような不可思議な気持ちになった。 2021年12月4日
老後の資金がありません (映画) rieko 感想 原作はブックウォームの会で2,3年前に紹介された。今回映画化されたので、コロナ感染者数が激減した時を見計らって鑑賞した。題名からは悲壮な感じがするが、映像では、ハッピーな気持ちにさせるコメディーであると思った。テーマ曲も氷川きよしが歌う「HAPPY」だ。登場人物は多彩で、経済評論家萩原博子、脚本家の三谷幸喜など存在感のある曲者がそろう。圧巻は浪費家の姑を演じる草笛光子である。80代とは到底思えない美貌とスタイルでため息を誘う。一転して、失踪した老人に扮装した姿は、たくましい役者魂を感じた。コロナ禍での映画鑑賞なので、マスクの下で遠慮がちに微笑みながらの鑑賞だったのが、非常に残念だった。 映画 2021年12月4日
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