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みんなの本の感想など(2022年1月~12月)

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■2022年1月からの投稿

  
タイトル 著者 登録者 内容 ジャンル 登録日
ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー2 ブレイディみかこ tami  イギリスのブライトン在住のライターの母親目線で書かれたこの本は、息子を持つ私にとっては親近感も感じられ、またとても読みやすい文章で書かれている。様々な社会問題や文化の違いを知り・考える良いきっかけとなる一冊である。
 日本人の母親とアイルランド人の父親と息子の英国での生活は、周囲がワーキングクラスの人々が多い環境で貧困に関連した様々な影響を子どもたちが受けていたり、差別の問題などもあり、その中で自分なりに進路を考えながら成長していく息子との会話や体験で、母親もまた親として悩み成長していく様子が伺える。日本に帰国した時に、母親や息子が感じる事や、彼女の実家の様子なども興味深かった。
 続編は中学を卒業した後の進路を考え選択する時期を迎えつつある息子の姿が一つのストーリーであるが、その中で英国の教育制度と日本の教育制度の差や、特にGCSE(中等教育修了時の全国統一試験)の国語のスピーチテストの話(5S:Situation,Strongest,Story,Shut down,Solution(スピーチの書き方のメソッド))や。「コンサートのプロモーターになったつもりでクライアントに会場の提案をするためのプレゼン資料を作りなさいという宿題」などに取り組んで資料を作る様子を見ると、今回は特に日本の情報教育等の遅れが心配になった。日本の教育TVで、高校生位の学生が将来の自分の夢をどうやって実現しようか?将来を考えるというような趣旨の番組をいくつか見た事があるが、情報収集は似たような現代らしいSNSやHPの活用はしているが、そこから、何をどうまとめたら効果的か等のアウトプットや、それをどうプレゼン(スピーチ)するかで大きな差が感じられる(しかも英国の中学生と比較し・・・)。語学教育もいうまでもないが、教材にしても情報教育でいえばその活用術も、日本の教育が今後どうなっていくのか、どのように”情報教育の後れを取り戻すのか(日本は先進国より10~20年遅れていると言われてきた)と思わずにはいられない。
 様々なエピソードや、息子の言葉などから、その成長が感じられ、親が一緒に考えたり、行動を共にしたり楽しんだりする時間の残りが、もうあと数年であると思え、その寂しさを時々感じさせられた。
 それから、一番衝撃を受けたのは、フリーランスで働くためのビジネス教育と、失業者に起業を勧める(スタートアップ)の話。特にやりたい仕事でもないのに、失業者に起業を勧め(補助金を出したり、ローンも貸すが)、社会保障制度(失業保険や生活保護)は出さない政策の話だ。仕事につけずに、そんな働き方で(自分だけで)世帯全体を支える事を想像したり、将来は日本もそのような流れになるかも知れないと思うと、本当に怖くなった。格差はどれだけ広がってしまうのだろう。
 続編(2)になると、お隣りの家も含め周囲が、ワーキングクラスが自宅を手放し、だんだんミドルクラスの人が増えていく中、地域が徐々に変わっていく様子も書かれていた。子どもも成長して独立し、地域も少しづつかわる。それは、どんな社会でも想像できる事であるが、それだけに寂しいような気持ちにもなった。
2022年
子宝船~きたきた捕物帖2~ 宮部みゆき rieko 江戸時代の本所深川で岡っ引きの下っ端のような働きをしている北一が主人公。ひょんなことで知り合った喜多次とのコンビで事件を解決するシリーズの二作目である。生後間もない赤ん坊の死が、宝船の絵の呪いが原因か・・という一話から、幼い子供と両親の毒殺という三話まで一気に読ませる。人情の機微に触れて成長してゆく北一の姿を温かく包んだ作品である。随所に、人生の紆余曲折を経た大人たちのアドバイスや経験談が展開されていて、はたと膝を打ちながら読んだ。 2022年06月16日
古本食堂 原田ひ香 rieko 感想 実兄の死後、彼の経営していた神保町の古本屋を任された年配の独身女性と彼女の姪の女子大生を軸に話が展開する。章ごとに古本と神保町界隈のおいしい食べ物が紹介され、実際はそれらが主人公なのではないかと錯覚しながら読み進めた。作者の古本に対する深い愛を感じる。 2022年06月16日
大黒島 三輪太郎 rieko 奥日光の湖に浮かぶ小さな島(実際は架空)にある寺の執行(管理責任者)僕が主人公の”大黒島’、古代日本の神々の国盗り争いの話を現代に残る建造物に見出す”オオクニヌシたち”、上皇と上皇后のサイパン島への慰霊の旅を基軸に、かの地ではてた人々に思いをはせる”海の碧さに”の3篇 2022年07月04日
ブータン ~世界でいちばん幸せな女の子~ 阿川佐和子 rieko 台東区立三河中学校の同級生仲良しグループ6人が年に一回の同窓会を開いてきた。卒業後30年近くを経た彼女たちの友情物語が、ブータンとあだ名されていた同級生を軸に展開するのがこの小説である。丹野朋子は中学時代はふっくらした体形と名字からそのようなあだ名をつけられ、いじめやからかいの対象となっており、盗みの濡れ衣まで着せられたこともあった。しかし、一人の女子学生(仲良しグループ6人の一人)が彼女を弁護してくれたことで、前を向いて生きて行こうという気持ちになったという。たった一言のおかげや、たった一人だけでも自分を信じている人がいるだけで気持ちが軽くなり、幸せと感じられるという経験は、夫の転勤で国内外を転居してきた私自身の実体験とかさなる。随所に、 ライフステージの変化や現代の多彩な生き方に影響を受けやすい女の友情とか、介護についての親戚間のシビアな駆け引きなど、昨今の社会をチクリと皮肉る文章があり、思わず笑ってしまうこともあった。本著は全部で6章からなり、それぞれ6曲の音楽がテーマと密接にかかわっているので、その音楽の時代背景や歌詞を詳しく調べれば、小説をさらに深く楽しめると思う 2022年09月07日
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